概括と言っても、要するにそれ以上の展開はなかった。
バレンタインデーが過ぎ、私たちバスターズは、いつも通りの、平穏な――でも、すっごく楽しい――日常を過ごしていた。
3学期はとても短い。
桜の季節、萌える新緑の季節から、鬱々とした梅雨を過ぎてやがて夏に至る1学期、ヒグラシの鳴く晩夏から雪の降り積む冬の真ん中まで、穏やかに移り変わる時間の2学期と比べ、雪が溶けていくその僅かな時間だけが、私たちに残された3学期だった。
かなちゃんや直枝君たち2年生の皆は、当然というか、期末考査に追われていた。いかに地味に忙しい寮長コンビといえども、さすがに学生の本分をおろそかにするわけにはいかない。
それが終われば、ちょうど桃の節句。春のはじまり、冬の終わりだ。
棗君からの答えはなかった。下世話な話をすれば――ああもう、好い加減に自分が最低に思えてくる――棗君と神北さんとの関係も、これといって変化があるようには見えなかった。
あれは、義理チョコとか友チョコとかにはしておけないモノだった。と思う。高揚のあまり見間違ったとかではない。はずだ。なにしろあの日のことはあまり明瞭に覚えていないので、そうそう断言できる自信もないわけだけれど、でもたぶん。
答えは3月14日――ということだろうか。
たぶん、そうだろう。季節にイベントを必要以上に盛り上げる棗君のことだ、きっとそこも几帳面にやるに違いない。
その答えがどのような答えであれ。
腹をくくったとは言わない。そんなこと言えるもんか。だけど、ボールは投げたのだ。実際のところ、あとは答えを待つしかできない。
せめてもの救いは、14日が過ぎれば、もう10日も経たないで卒業式の日になるってところだ。お別れのタイミングとしては、これ以上ない。バスターズがかりそめの場所になってしまうのは無念の一言では到底言い表せないけれど(こういうことに踏み込んだ以上、なにかあったとして、そのままここに居られるとは思っていないのだ)、それはまあ――そういうものだ。
そのときは、かなちゃんと直枝君にでも泣きつこうと思う。それくらいは許して欲しい。
いっそこのまま時間が止まればいい、特に幸せでもないのにそう思う。そんな私を知ってか知らずか、地球は回り、季節は巡っていく。
起承転ときて、結がはじまります。