one more final / "Orbita"


 そうしてふたりは、長い長い旅に出たのでした。
 ひとりはその背に人々を乗せ、星を訪れては種をまき、また長い旅に出る。
 そんなことを幾千幾万と繰り返しながら、空虚の海を渡っていくのです。

 長い長い旅の果て、捲くべき種もなくなったとき、ふたりは行く手にふたつの星を見つけました。
 大きな星の回りに、小さな星が回っていて、まるでそれはふたりのようでした。

 己の体を種にして、この星に捲こうと、ふたりは決めました。
 そして、その星に近づいていくにつれて――ふたりは不思議な感触を覚えました。
 ふたりは、その星を知っているような気がしたのです。

 でもふたりは、そんなことはすぐに忘れてしまいました。
 目の前の星があまりに肥沃だったから。

 遠い遠い旅路のうちに、ふたりは自分たちがはじめはどんなものだったのか、わからなくなってしまっていたのです。
 だから、ふたりは気づかなかったのです。

 いつのまにか時は巡っていたことに。
 いまふたりの目の前にあるのは――彼らの生まれ故郷であることに。

 ふたりはごく自然に、ふたつの星に降りていきました。
 ひとりがひとりのまわりを巡り続ける、彼らの旅路と同じように、ふたりは星にのり、まるで踊りを踊るようにくるくると廻っているのです。

 やがてふたりは、喜びのうちに星に最後の種をまき始めました。
 黒いビロードと赤いリボン、それに銀色の紙をアウロラになびかせて。
 そうして――
 そこから、すべてが命が始まったのです。


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