4.卒業式


 やがて季節は巡り、冬を越え、春がやってきた。
 3月――卒業式だった。

 恭介たち3年生が校舎から出てくる。手に筒を……卒業証書を持って。
 その筒を恭介は軽く挙げた。
「お前もとうとう卒業か……」
 鈴が感慨深げに呟く。
「そうだな……」
 万感の思いを込めて……なのだろうか、恭介もしんみりした口調だった。真人と謙吾も腕組みをして黙って突っ立っている。
「理樹」
「うん」
「鈴のことは頼んだぞ」
 目が丸くなる。
「どうしたの、突然」
「そうか」
 少し寂しげに、呟くような声だった。そして卒業証書を左手に持ち替えると、右手を懐に突っ込む。
 取り出したのは――妙にアンティークな懐中時計だった。
「なに、それ。そんなの持ってたんだ」
「まあな」
 心ここにあらずといったふうな声だった。
「恭介?」
「心配するな、大丈夫だ」
「何を……」
 言いかける僕の言葉を聞く様子もなく、恭介が懐中時計の突起を押した。
 カチリ――