21.日々の暇に


 朝、学校が始まる前に、猫にエサをやるのが僕たちの日課だ。
 顔を洗って制服に着替え、学食で鈴と落ち合う。鈴が新入りの猫の面倒を見ながら朝食を食べ終わると(よく考えてみれば器用なものだ)、学校につながる渡り廊下のそばで猫たちが待っている。
 二人で座り込んでモンペチを開け、そいつに群がるのを眺めて、おなかがいっぱいになったのを捕まえて猫じゃらしなんかで遊ぶ。
「ぐるーみー、ぐるーみー……」
 鼻歌を歌いながら毛づくろいする鈴はもう、人間なんだか猫なんだかわからない生き物みたいに見えた。
 やがて予鈴が鳴る。鈴がぱっと猫じゃらしを放り投げた。
「行こうか、鈴」
「うん、そうしよう」
 名残惜しそうに立ち上がる。毎朝の光景だ。

 授業は退屈だ。近頃は進度はそんなに早くない。ぼんやりと聞き流しているだけでも置いていかれてしまうことはなかった。
 教室の窓から眺める、秋の高い高い空はまるで、そんな茫洋とした時間を象徴しているようだった。

 昼は学食か購買で、食べ終わるとまた渡り廊下で猫の相手をする。
「ぐるーみー、ぐるーみー……」
 その横でぼうっと鈴を眺めている。ゆるやかな日差しとそよぐ風が心地いい。外でこうしているにはいちばんいい季節だ。

 午後の授業が終わって、モンペチを買いに町に出る。戻れば猫たちが待っている。日が暮れると猫たちはねぐらに戻る。僕たちは学食で夕食を済ませる。
 鈴と別れ、風呂を済ませて、少しだけ授業の予習復習をして、ベッドに入る。目を閉じる。意識がフェードアウトしていく。

(続)


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